2013年9月16日月曜日

松阪市の決算審査で指摘したこと・市債残高について 植松泰之

 先日の決算審査(総務生活分科会)ではいくつかの疑問点、改善点を指摘しましたが、一点、議論の噛み合わなかったところがありました。

 松阪市には監査委員が3名おり、松阪市の予算が公明正大に執行されているかを定期的に監査しています。そして決算発表と同時に監査委員による審査意見書が提出されます。これも参考資料の一つとしながら議会は決算審査を行います。

 その中に松阪市の市債(起債)残高に対する審査意見がありました。「一般会計、特別会計および企業会計を合わせた松阪市全体の市債(起債)残高は1,163億9,809万円で・・・市民一人当たりに換算すると69万円に相当する」(編集:植松)というものです。

 今回、私が監査委員に指摘してもなかなか議論の噛み合わなかったのは、起債残高(市の借金という言い方もされている)を市民一人当たりに換算する必要があったのか、算出された換算値にどのような意味があるのかという点でした。

 監査委員は「1千億円以上の金額はなかなか想像し難いため、分かりやすくするために市民一人当たりに換算した」と答弁されました。あくまでも分かりやすさを追求したということです。果たして、本当に分かりやすくなったのでしょうか。そもそもどこが分かりにくく、何を分かりやすくしたのでしょうか。実体のない漠然とした値であるがためにかえって不安感を増幅させるだけのものではないのでしょうか。

 借金つまり市債(起債)残高1千億円について論評を加えるならば、もう一方にあるそれと同等の、もしくはそれ以上の“市の資産”があるということに言及する必要があると考えます。「松阪市の借金は市民一人当たり69万円です」といって、今後、松阪市民一人一人が69万円の借金を返済していかなければならない債務者だという印象は持たないと断言できるのでしょうか。市民一人当たりの市債(起債)残高がいくらまで上がれば市が破綻し、いくらまで下がれば健全財政だ、などという公的な指標があるのでしょうか。

 公的な指標には“実質公債費比率”があります。これは松阪市に入ってくる税金や地方交付税のうち、何%が債務の返済に使われているのかを示す指標です。松阪市は7.5%です(この比率が18%を超えると起債するのに許可が必要になります)。「市民一人当たりに換算すると69万円」の借金(市債残高)という表現は松阪市の財政の実態を正確に表し得ないし、むしろ独り歩きし、誤解を与えてしまいかねない言い方ではないでしょうか。また、それならばと1千億円の市債残高を市が全額返済するといって銀行は困ってしまわないでしょうか。

 決して1千億円の市債残高は大きくないと言っているのではなく、財政構造を見るには公明正大で複眼的且つ冷静な見方が必要なのではないかということ、そのような思いから今回は指摘しました。

 自治体の財政を分析するにはいろいろな方法があります。いろいろな考え方もあります。これからも皆さんとともに議論を続けていくことが大切だと考えています。

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