2013年10月17日木曜日

そもそも住民投票は現行法の中で行うことができるようになっています

 10月15日、松阪市議会の総務生活委員会において「市民まちづくり基本条例」案・「住民投票条例」案について審議をし、委員会としては住民の皆さんの意思を尊重し、到底認めるわけにはいかないという多数の統一意見の下、否決という結論を出しました(最終の決議は18日の本会議において行います)。

 本条例案に対しては様々な考え方が存在しますが、これらを否決すべき理由や背景の概略は前々回の本ブログの中で述べた通りです。そして今回、委員会審議の中で、特に住民投票条例案に関する議論を集中的に行い、地元紙に記事としてもその内容が一部掲載されました。

 このような一連の流れから、ともすれば住民の皆さんの中には「この否決によって松阪市のまちづくりが一歩後退してしまうのではないか」という印象をお持ちになってしまっている方々もいらっしゃるのではないでしょうか。

 そのような不安を払拭するためにも、あえて次の2点に絞ってこの問題について補足しておきたいと思います。

 一つには、そもそも住民投票は本条例案が無くとも現行法(地方自治法「直接請求」第74条)に則って行うことができるという点と、もう一つには、この則るべき地方自治法「直接請求」第74条の規定内容が、日本国籍を持つ20歳以上の有権者に限られた権利だという点(「日本国民固有の権利」とも言われるもの)です。

 つまり、今ある「日本国民固有の権利」を行使すれば、いつでも住民投票を行うことができるように既に制度化(一定数以上の連署は必要ですが)されているのです。したがって皆さんの権利を考えればこのことをもってして「市民まちづくり基本条例」やそれに付随する「住民投票条例」などは無くてもよい条例だということができるのです。

 
 そうであるなら、なぜ条例化が叫ばれているのか、言い換えれば、条例が制定されて一体何が変わるのかを考えなければなりません。

 本条例が制定されれば、、「日本国籍を持たない人たち」も住民投票を行うことができるようになります。つまり、地方自治法にある「直接請求」権の権利行使の手続きを取らずとも、松阪市独自で作った「住民投票条例」に則って国籍に関係なく住民投票が行われてしまうということです。

 これは「日本国籍を持たない人たち」に本来ならば付与されていないはずの「直接請求」権という権利を付与することと同等の意味を持つことになります。

 こう考えれば、本条例案は無くてもよい条例ではなく、「あってはならない条例」だとも言えるのです。

 誤解していただきたくないのは、これは決して「日本国籍を持たない人たち」のことについて申し上げているのではなく、問題としているのは、地方自治法という法律の趣旨を無視してまで松阪市が独自にこのような条例を作ることに対し、すべての住民の皆さんは承知しているのですか、ということなのです。言うまでもなく承知しておりません。

 私はこのような条例案を受け入れることなど到底できません。もし受け入れてしまえば、それは良識ある住民の皆さんの意思に背くことにもなります。

 念のために申し上げれば、これらの条例案が否決されたからといって、これからの松阪市のまちづくりが後退するなどということはありません。

 
 18日の本会議には、強い決意を胸に臨みたいと思います。

2013年10月6日日曜日

松阪市の中心市街地問題は高齢化と人口流出の問題!?

 松阪市の中心市街地といえば、松阪駅西前から続く商店街を中心とした区域や駅東の国道沿いの区域を指しますが、他の地方都市と同じように、特に駅の西側の商店街ではシャッターを閉める店が後を絶たず、それに伴い、若い世代も市の郊外などの区域外に移り住み、高齢者の割合が増え、空き店舗のみならず空き家も増え続けるという状況が続いています。
 

 駅に隣接した市内唯一の百貨店が平成18年に閉店してからというもの、その傾向はより顕著なものとなり、中心市街地の空洞化は止まりません。

 松阪市はこの状況を打開しようと、「松阪駅西地区市街地再開発事業」の都市計画を決定したのが平成20年のことで、その後、核的事業が整わなかったことなどからこの計画は断念され、新たに中心市街地の再生のための政策が練られ、アクションプラン(平成22年度~平成24年度)として平成22年3月にまとめ上げられたのが「松阪まちなか再生プラン」(以下、再生プランという。)でした。

 したがって、この再生プランに基づいて様々な政策が実施されることによって中心市街地の諸問題、つまり高齢化の進展や人口流出などによる街の空洞化問題が解決に向かわなければならないはずでした。

 ところが、ご承知の通り、依然として中心市街地は再生に向かっている状況にはありません。

 一体、どこに問題があったのでしょうか。

 私は再生プランの位置づけに問題があったのではないかと思っています。

 再生プランの掲げる課題認識と理念に注目すると・・・。

 再生プランの冊子には、冒頭でしっかりと中心市街地の空洞化問題が認識され、これを克服することが最大の課題であると明記してあるにもかかわらず、それにつづく再生プランの理念では「本市にある様々な「食」のすばらしさを感じ、先人の築き上げた「歴史」を温め、それらを次世代に語り継いでいくことを基本にするものである」(編集:植松)としているのです。

 課題に示された内容とそれを克服するための理念とが一致していないと言わざるを得ないのではないでしょうか。

 松阪市のまちづくりに再生プランをどう活かしていくのかというプランの位置づけが明確になっていないのではと思うのです。

 街の食べ歩きマップを作成したり、中心市街地に「国学の道」を設定し、歴史の再発見を促したりするなど、住民の皆さんや商店の皆さんが真剣に取り組んでいらっしゃる事業は、正に再生プランが理念として掲げる「様々な「食」のすばらしさを感じ、先人の築き上げた「歴史」を温め、それらを次世代に語り継いでいくこと」に繋がるものです。

 ところが、松阪市が最大の課題として挙げている高齢化の進展や人口流出などによる街の空洞化問題の克服には直接的には繋がっていないのではないでしょうか。

 実際、中心市街地の高齢化率の上昇は止まらず、今や34%を超え、空き店舗も増え続け、空き店舗率は22%を超えています。そして市が昨年行った市民アンケート調査では、半数以上の市民が「中心市街地にもっと居住を促すべきだ」としているのです。

 再生プランの理念通りに実施しているにもかかわらず、それがことごとく課題克服に繋がっていないとは何と皮肉なことでしょう。

 私たち住民は、市の「みんなでできることからまずは始めよう」という合言葉の下、それに呼応するようにそれぞれの立場で再生に向かって取り組んできました。

 しかし、一方で市の行政は、その合言葉の裏側には「できないことは後回しにしましょう」という意味のあることを私たち住民には示さず、自ら目を背けてきたのではないでしょうか。

 中心市街地の空洞化という最大の課題を克服するのは並大抵のことではありません。だからこそ私たち住民は「できることから始め」なければならず、そのことに一生懸命取り組んできましたし、これからも変わらずに取り組んでいくつもりです。

 しかし、市の行政が一緒になってその言葉に甘んじ、中心市街地における高齢化の進展や人口流出などによる街の空洞化問題を先送りしていては市全体が疲弊し、先細りになってしまうのではないでしょうか。

 そうならないためにも今後は国が提案する「高齢者等居住安定化推進事業」や「空き家再生等推進事業」、「地域自立型買い物弱者対策支援事業」などの活用を通して、中心市街地にお住いの高齢者の方々が安心して住み続けられるような街、そして「中心市街地が生活するのに便利になった」と再び郊外から移り住んでもらえるような街を目指して十分な対策を打っていく必要があるのではないでしょうか。

 このことを次の新たな基本計画(平成26年度~平成29年度)にも反映させていくことが必要ではないかと考えます。